前回、修善寺教室に来てくださった生徒さんからいただいた写真画像をもとに、ようやく気球のある風景が完成しました。
今回は制作過程を順を追って紹介していきます。
カッパドギアからの気球。日の出のフライト。ワクワクするお話を聞いてからあこがれを込めて描き始めました。
用紙選び
今回は、画面が細かい描写になりそうなので、肌理の細かい用紙を選ぶことにします。カラーペーパーも考えましたが、今回はレンブラントのパステルペーパーの白を使ってみることにしました。
サイズはA4サイズの用紙です。
まずは写真からトレースしますが、カッパドギアの岩の様子は細かいので特徴のあるところをざっくりとらえて配置のバランスが崩れない程度にトレースします。
そのあとでグレーのパステル鉛筆とシェーパーを使ってスケッチしていきます。
まずは空を描いていきます。普段使っているWatson紙と違ってパステルを粉にして混色する加減が全く違います。筆圧など紙になれるようになるまでちょっと苦戦しました。レンブラントのパステルペーパーはどちらかというとパステルを直接描きこむほうが描きやすいように感じていますが、空のグラデーションを滑らかに表現したかったので、ここは粉にして指で丁寧にぼかしこんでいきました。
輪郭の出し方と下絵の筆圧
下絵がぼんやりか擦れてしまい分かりにくくなりそうなので、再度パステル鉛筆で描きたしながら進めます。
彩色していて、下絵が消えそうになって、あたりをつけていた部分が分かりにくくなって、形のバランスが取れなくなることもよくあります。
かといって下絵のラインを強く描きすぎて、紙に溝ができてしまいパステルを乗せても線が残ってしまうこともあります。そうなると線の溝が埋まるくらいにパステルを厚く載せる必要があるのですが、ほかの面とのバランスもあるので、今回は、分かっていれば避けたいところです。
実は、溝を生かした描き方もあるのですがそれはいずれ紹介します。
気球の周りの空の色で気球の輪郭が分かるようにしていくと、気球がくっきりとしていきます。
遠くの山の描き方
空気遠近法というらしいですね。
遠くの山は、稜線のほうが色が濃くて裾野のほうが淡くなっていくんです。
ずっと不思議でしたが、山並みを見ていると、遠くの山って上のほうが濃くて下のほうが淡いんです。そして、手前の山の上がまた濃くてしたが淡くなる。この層の繰り返しが遠近感を出してくれます。
大自然が作り出したカッパドギアの奇岩群
噴火によって形成られた凝灰岩や溶岩層が雨風により浸食され硬い部分が残り、とんがり帽子のような、様々な奇岩。まさに大自然の作り出すアートですね。
これを描くのは結構大変かも。
パステル鉛筆とシェーパーでおおよそのバランスをとって、朝日に照らされてオレンジ色に輝くさまをうまく表現できたらいいのですが、けっこうむずかしいなぁ。強調したい光の当たる部分は、パステル鉛筆では、厳しいため、直接パステルを乗せていきます。
谷の部分に青をすこしのせてみました。
これって???
思わぬところでイメージは膨らむものです。
色が教えてくれるイメージの印象
手前の谷の部分に青を乗せたところからイメージは、現実世界から心象世界へと膨らんでいきます。
ここに泉?それとも霧?
奇石群が、長い歳月で出来上がったんだよね。
イメージに水や霧の流れを加えたいなぁ。
心象風景へ
ここからは、心の赴くままに、色を乗せていきます。
初めは、水の流れを霧に変えて表現しようかなぁと進めていったのですが、一番手前の気球が輝かないんです。
気球とその向こうの景色の距離感が今一つ決まらない。
そこでもう少し奇石群を描きたして、谷を深くしてみることに。
まだ、足りないかなぁ。
というわけで、青の色をもう少し強くしました。
あとは、気球にあたる光の協調など、全体のバランスを見て調子を整えて、完成しました。
気球に乗って旅をしている気分で楽しい時間でした。
写真提供していただき、お話を聞かせていただきありがとうございました。
「気球に乗りたいなぁ」を拝見し、最初はA20号くらいの絵かと思ったのですが、A4サイズとのこと。このサイズで、よくこんなに細かく描写できるものだとつくづく感心致しました。凄く緻密な仕事をしないと、ここまで素敵な絵は出来ないのだと、自分の作業の良い反省材料になりました。素敵な絵を今回も見せて頂き有り難うございました。
コメントありがとうございます。
ただただ、描きたかった、気持ちいで描いたものです。
絵には描き手の個性が出ます。中曽さんの描く世界感をいつも楽しみにみさせていただいています。中曽さんにしか描けない世界観を大切にしてこれからも頑張ってください。